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縁起を担ぐということ

 このワタクシの知人に熱狂的な日本ハムファンの男がいる。
 この男、自分が日本ハムの試合をテレビで見ると負けるらしく、絶対に見ないようにしているらしい。だから、クライマックスシリーズなんてまったく見ていなかったようだ。

 ところで、今では毎日のように何事も無く飛行機に乗っているこのワタクシではあるが、今から20年くらい前は飛行機に乗るときはビビリまくりであった。
 当時、開発途上国ばかりに行きだしたこのワタクシの乗る飛行機は、日本では見たこともないようなソ連製とか中国製の飛行機が多かった。
 それらの飛行機は最新機でも「この飛行機大丈夫か?」と思うような飛行機なのに、ソ連や中国以外には、使い古された飛行機が払い下げられていた。
 いやはや、いくら神仏を信じないこのワタクシでも、毎回毎回搭乗前には神に祈りを捧げていたものである。
 
 そして、何よりも一番の問題は、最初に飛行機に多頻度で乗り始めた頃には、大の飛行機嫌いであったことである。
 離陸時の強烈な加速にビビり、フワッとした感覚に驚き、上空ではちょっとした揺れですら恐怖に慄いていたのであった。
 その上、乗っている飛行機がボロボロでは、飛行機の中でゆっくり寛げるはずもなく、出張先に着く前に精神的に疲れ果てていたものである。
 とにもかくにも、自分の乗っている飛行機が墜落するという疑念が頭から拭い去れないのである。

 今でもそうだが、毎年150回くらい飛行機に乗っているだけに、三日に一回以上は「自分の飛行機が墜落しませんように」と祈っていたわけである。
 飛行機に乗ったあとも、座席に座るなり、ウォークマンとかの携帯用音楽プレーヤーを取り出し、離陸し着陸するまでずっと音楽を聴いていたものであった。(当時は、機内での機械の使用を制限していなかった)
 
 そんな生活が3年くらい続いたある日、ふとしたことに気が付いた。
 「もしこのワタクシが乗っている飛行機が墜落したら、この飛行機に乗っている他の人も巻き添えになるということなのか?」
 当然といえば当然である。
 すると、このワタクシがそういう不安を持っているばかりに飛行機は墜落し、他人も死んでしまうわけである。
 しかし、現実には、飛行機の事故なんてほとんど起こらない。
 つまり、このワタクシの頭の中で思っていることが実現するほどこのワタクシはすごい人物ではないし、仮に「飛行機が墜落する」が実現するなら、「明日億万長者になる」も実現するはずである。
 つまり、このワタクシのちっぽけな考えなんて、多分、世の中に起こることにはまったく何の影響もないわけだ。
 そう思った瞬間、飛行機がまったく怖い乗り物ではなくなってしまい、最近では公共バス感覚で飛行機に乗っているような感じになってしまった。
 飛行機が、あまりに日常の乗り物になってしまった(&ほとんどの国に行きつくしてしまった)せいか、最近では旅にまったくスリルを感じないのが難点である。


 最初の話に戻るが、いくら熱狂的な日本ハムファンでも、たった一人の人間がテレビを見たら負けるなんて事はありえないはずである。
 そんな事で世の中が動かせるなら、ソイツもこのワタクシも、もっと裕福な生き方をしているに違いない。
 とはいえ、縁起を担ぐことくらいしか、世の中を動かすことのできない我々小市民にはできなのだが。。。
 そして、一人が縁起を担いだくらいで何も変わらないというのも真実である。


(関連エントリー)
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